魔術師と下僕

「いらっしゃい、ジオルタ。……まあ」

 やってきた弟子と……少年少女たちを、タミヤは驚きと共に出迎えたが、優しい笑みを浮かべると、「入って」と全員をリビングのテーブルにつかせた。ほどなくして、お茶の香りが漂ってくる。緊張気味だったナターリアが恍惚とした表情になっているのに気づいて、タミヤはくすくす笑った。

「かわいい子たちね、ジオルタ。レンブラントも」
「かわいかねぇかわいかねぇ。どいつもこいつも生意気だし、人に心配ばっかかけやがんだ」

 レンがやれやれといった調子で言う。ジオは彼をジト目で見ると、「……なんで着いてきたのさ」と嫌そうに言った。

「あ? 弟子が師匠に会って何が悪いんだ」

 と、レンは開き直り、タミヤはそのやり取りを見て、どこか懐かしそうな目をした。

 タミヤはイリヤを見て、ぼろぼろの幼い少女のことを思い出す。今は清潔な服を着て、健康的な容姿で、友達もたくさんできたようだ。

「イリヤさん」

 イリヤはすこし緊張気味に、「はい」と返事をする。

「よく帰ってきてくれたわ。ずっとあなたに会いたかったの」

 あたたかく、優しい声だった。

「あなたのおかげで、ほら、見て」タミヤはジオを示す。イリヤもジオの方を向いた。

「あんなに優しそうな目をしている」

 イリヤはそうかな、と思った。イリヤの目には、いつもと変わらないジオだ。
 でも。
 ずっと昔からジオを知っているこの人にとっては、まったく違って見えるのだろう。

「私の大切な弟子を救ってくれてありがとう。これからもよろしくね」

 唐突にそんなことを言われて。
 イリヤは胸に、じんわりとあたたかいものが広がるのを感じる。救った。わたしが? 救われたのは、わたしの方なのに。
 それでもイリヤは精一杯の気持ちで、

「はい」

 そう、大きく頷いた。
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