魔術師と下僕
イリヤはしばらく庭をうろうろしていたが、時間が経つにつれてどんどん心細くなってくる。
あたりは少しずつ暗くなり始めた。ジオはなかなか帰ってこない。変温動物のためか寒いとは思わないのが唯一の救いだった。
なにより辛いのは空腹だ。ハエなどが飛んでくると、自分の意思とは全く関係なしに、あ、食べたい、と思ってしまうのである。
たとえば、一定の時間が経てば元に戻ったりしないだろうか。
あの絵本を結末まで読んでさえいれば、答えがわかったかも知れない。
どうにか家の中に入る方法はないか……と思ったが、悪いことにジオの戸締りは厳重で、自室は二階だった。
どれほどそうしていただろうか。
意識が朦朧としてきた。
このまま眠ってしまって平気なのかどうかもわからないが、眠気に抗えそうにない。
美しい星空が広がる時刻になっていた。
一匹のカエルは、ゆっくりと目を閉じたーー。