魔術師と下僕

 そうして暗くなるまであちこち探し回ったが、返事はない。当然だ。イリヤは庭からまったく動けていないのだから。

 ふとジオは、自分が重大な見落としをしていたことに気がつく。

 もしも一人で出かけたか、もしくは家出なら、なにか書き置きなどは無かっただろうか。

 一緒に暮らし始めてからというもの常に礼儀正しいーーもう少し心を開いてくれても良いのだがーーそんな彼女のこと、自分に声もかけずに去るというのは考えにくい。

 ジオは急いで帰宅した。庭で睡魔に襲われているカエルの存在など知るよしもなく、イリヤの部屋に直行する。

 さようなら、お世話になりました、探さないでくださいーーそんな文面を想像すると、寒気がした。

 部屋を探したが、手紙は無かった。家中隅々を見て回ったが、入れ違いで帰宅しているということもまた、無かった。

 もう一度部屋に戻ってーージオはようやく、読みかけの絵本の存在に気がつく。カエルの絵本だ。片っ端から買い与えた中に混じっていたのだろうが、絵だけでも気分が悪くなる。それをめくってみてーー、


 まさか。


 と、思った。
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