魔術師と下僕
お菓子屋、画材屋、八百屋と巡っていくうちに、イリヤのために買った物で二人の腕がいっぱいになったころ。
「疲れた。僕休憩したいから付き合って」
と、ジオはフルーツティーを売っているキッチンカーを顎で示した。二人分のフルーツティーを買い、ベンチに腰掛ける。イリヤは炭酸入りの方を目をまんまるにして飲んでいた。
「これも魔法ですか?」
「魔法じゃないけど、魔法みたいなもんじゃない?」
「でも、ご主人様のお茶の方がすごいです」
ジオはつい、ふっと笑った。
「当たり前。なぜなら僕は天才だから」
家に帰ったら早速新しいお茶を開発しなければ、とジオは思う。
飲み物に炭酸ガスを入れる機械を導入しようかーーと、考えを巡らせていた時。
「……あ」
イリヤの表情が険しくなった。彼女の視線の先を追い、ジオは「何かあった?」と短く訊ねる。
「あの……」
イリヤの声が震えている。
「前にいたところの……」
そこまで聞けば充分だった。
イリヤは人混みの中に、孤児院の人間を見つけたのである。