魔術師と下僕
質問に答えるための資料などを探しに、ジオは書斎へ引っ込んでしまった。数秒を待たずにどっかん、ばさばさ、ちょっとなにこれ、が立て続けに聞こえてきたのでこれはもうしばらく出てくる気配がないなとイリヤは思う。
……最近いつもこうだ。
イリヤを心配して講師になったはずのジオは他の生徒の世話もしなければならなくなるという当たり前の事態に直面して、結果イリヤに使える時間が少なくなった。
ジオ自身、すぐそこにいるからとイリヤの質問を後回しにしがちだ。
「正直草と猫騙し草の見分け方、あとで教えてくださいって前にも言ったんですけど」
「うん、探し物があるからあとでね」
こんなことが続いて、イリヤは内心不満が溜まっていった。自分も生徒なのだから、他の生徒と同じように対応してもらいたい。
こうやって後回しにされて、挙句忘れられるというのは、やはり下僕だから、なのだろうか。
すぐに相談してって言ってたのにな……と、イリヤはついこの間聞いたばかりのジオの言葉を、遠いいつかの話のように思い出す。
でも、忙しいジオの邪魔をするわけにはいかない。
イリヤがぐるぐると悩んでいる間に、初めて登校して授業を受ける日が近づいて来ていた。