魔術師と下僕
対面授業の日、用事があるから自分も一緒に行くと言ってジオがついて来た。そういえば知る機会が無かった電車の乗り方を教えてもらって、イリヤはジオと並んで座る。
「学校の連中ってなんかよくわかんないやつらばっかりで、あんまり関わろうって気にならなかったんだよね……」
道中、ジオは学生時代の闇の部分を吐露していたが、「イリヤは楽しめるといいね」と、祈るというか、イリヤに何かを託すようにそう言った。
託された側であるイリヤは、同年代の子たちと過ごすのは孤児院にいた時以来である。それに、学校と孤児院ではものすごく違いがあるだろうしーーと、なかなか緊張気味だ。
「友達ができてもできなくても、他人って本当にわけわかんないなってことを学ぶいい機会だと思うよ……」
学校が近づくにつれ、隣のジオがだんだんとくたびれ、十歳も老け込んだようにイリヤは感じた。
「あの、ジオ」
「なに?」
「もしかしてーー」
学校、嫌いですか。
そう訊ねようとした時、電車が駅に着いた。
「降りるよ。荷物忘れないで」
「は、はい!」
ジオに付いてホームを歩きながら、さっきのは訊けなくて良かったのかも知れない、とイリヤはひそかに思い直した。