魔術師と下僕
暗黒の時代
学校ってなんのためにあるんだろう、と少年は思っていた。
入学して早々に、「ジオルタ君ってかっこいい! 大好き!」という女子たちに毎日毎時間取り囲まれ、彼の心は少しずつ蝕まれていった。
冷たくあしらっているうちに「あー、あいつ? ちょっと顔が良いだけでスカしてるってかマジ感じ悪いよね」という評価に段々と変わっていったことで少しは息がしやすくなった。
男子は女子に取り囲まれていた頃から「なんか近寄り難いヤツ」として彼を敬遠していたし、それは女子に取り囲まれなくなってからも変わらなかった。
唯一絡んでくるのは、
「おいジオルタ、先輩に対してシカトぶっこいてんじゃねえよ」
……二歳年上の幼馴染、アホのレンブラントぐらいだ。
「僕シカトなんかしてないんだけど」
「昨日! 下駄箱に果たし状入れといただろうが!」
昨日。はて、と少年は思い返す。しつこいラブレターと、しつこい呪いの手紙と、しつこい果たし状が入っていたのは捨てたはずだ。
「ああ、捨てたわ」
「ナメてんのかてめえ! あとタメ口利くな!」
「すみませんチンパンジー先輩」
「誰がチンパンジーだ! 表出ろコラァ!」
「そうですね、チンパンジーに失礼でしたね。後で謝らないといけませんね。……先輩が」
直後、二人の魔術がぶつかり合って、何故か全然関係ない校長室の窓が割れた。一週間の停学になった。