魔術師と下僕
第五話 友達になった
四日間の対面授業の期間中、イリヤとナターリアが一緒に行動することになったのは、ごく自然の成り行きだった。今も昔も、トイレに誘う相手の有無が女子の学校生活を大きく左右する。この手の人間関係の問題は、魔法が使えようがどうにもできないのである。
というか、休み時間になるとナターリアが一方的にやって来るのでイリヤも特に拒まないだけだ。
それとは別に、イリヤにはもう一人、ちょっと気になる存在ができた。
隣の席のブルーノという男子生徒だ。
頬杖をついて不機嫌そうに窓の外を睨んでいる彼に、イリヤは挨拶をしてみたのだが、彼はイリヤの方をちらっと見て「ああ」と言い、また窓の方へ向き直ってしまう。
教室の真ん中の席、壁側に座っているイリヤはだから、常にそっぽを向かれている恰好である。
それでもブルーノは、消しゴムを忘れたことに気づいてまごつくイリヤの机に小さなメモを載せてくれた。メモの内容は、鉛筆で書かれた文字を綺麗に消す呪文だ。
イリヤはそのメモの端っこに、「ありがとうございます」と書いて、相変わらずそっぽを向いているブルーノの机に返したのだった。