魔術師と下僕

 ジオは「僕は雷が嫌いだけどね」とだけコメントした。昼食は三人で食べることになり、ジオは何度か「カレーも良かったかな……」と呟いていた。


「ブルーノ先輩のこと、そんなに気になりますか?」


 ナターリアは相変わらずブルーノが去った方角を見つめるイリヤに、ストレートに訊ねる。ジオはパスタに集中するふりをしていたが、もう味なんかわからなくなっている。


「気になるというか……。お友達になれたらいいなと思って」


 ジオは頬の内側の肉をがっつり噛んでしまって悶絶した。
 ナターリアは興味深そうに「ほう……」と呟く。


「友達ですか。今のところ完全に拒絶されてますし、難しいでしょうけどねぇ」


「でも」イリヤは呪文を教えてもらったことを思い出す。「根は良い人っぽい感じがするんです、なんとなく」


 そうですか、とナターリアは笑った。


「ま、根が良いなら葉も良くあって欲しいですけどね……先生、大丈夫ですか?」


 ジオはいまだ痛みに苦しみながら、「心配するの遅くない?」と言った。
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