魔術師と下僕

 対面授業の期間中、ジオとイリヤは校舎と同じ敷地にある寮に泊まることになっていた。

 それぞれの個室は安いビジネスホテルのように簡素で殺風景だ。ジオはフリーWi-Fiがあることだけが幸いだと言っていたが、イリヤはアイスの自販機に興味津々である。

 夜にお腹空いたらお菓子食べないでお茶を飲みな、というジオの教えが頭をよぎるものの、自販機の前でうじうじしていたところ、


「おっイリヤさんどれにするんですか〜?」


 と、食べ終わったアイスの棒を三本捨てに来たナターリアに遭遇、罪悪感は一気に消滅した。

 レモンシャーベットを選んだイリヤを、ナターリアは部屋でUNOとかやりましょうよ、と誘った。さらに罪を重ねているような気分だ。だが、有無を言わさず腕を掴まれ、イリヤは部屋に連行される。


「イリヤさん連れてきましたよ!」


 と元気に紹介されたイリヤが部屋に入ると、そこは既にお菓子の袋があちこちに散らばっており、よく短時間でこの状態にしたなと感心してしまうような有様になっていた。

 先に二人のクラスメートが来ていて、UNOのカードを手にすっかりリラックスした雰囲気になっている。癖毛の男子がヴィットリオで、眠そうな目の女子がヒルデだ。
< 51 / 168 >

この作品をシェア

pagetop