魔術師と下僕
「一つずつ取ってください。で、この石に呪文をかけるとどうなるかというと」
ライナルトが石に向かって呪文を唱える。「キャー、あの石になりたい」と一部の女子がざわつく。呪文のかかった石には火がつき、しばらくライナルトの手の上で蛍のように燃え続けた。そしてしばらくすると火は消え、手のひらには黒い燃えかすのようなものが残った。
「……みなさんにはこれをやってもらいます。石自体は本当に校庭から拾って来ただけのただの石で、別に石である必要はありません」
先生、と手を挙げたのはブルーノだ。班の面々もそれ以外の生徒も一斉に注目する。
「はい、ブルーノ君」
「ライターやマッチがあるのに、呪文で火を起こす意味がわかりません。どうしてわざわざオレたち子供に、危険な魔術を教えようとするんですか」
後方でジオがうんざりした顔をしている。留年生であるという色眼鏡で見ていることもあってか、大半の生徒はブルーノの物言いに反発した。じゃあ何のためにお前はここにいるんだ、偉そうにしやがってーーと。
空気がややピリつくなか、ライナルトはあくまで優しく、にこやかに答える。
「いい質問ですね。君の言う通り、魔術は危険で怖いものです」