魔術師と下僕
そんな中、ブルーノはいつまでも自分の石に手を出さない。反抗したいのだろうと誰も口を挟まずにいたが、どうも様子がおかしい。
一部女子から質問攻めに遭っているライナルトに代わり、ジオが動こうとしたとき。
「ブルーノさん、もしかして具合が悪いんじゃないですか?」
遠慮がちに訊ねたのはイリヤだった。
「保健室行きましょう」
ブルーノは、俯いて顔を隠してはいたが、真っ青になって震えていた。
運悪く、二人の様子は下世話な男子に気づかれてしまう。
「何やってるんですかー、先輩」
「頑張ってくださーい」
ライナルトのファンの女子が、聞こえよがしに「もしかして火が怖いから文句言ってたの? ださ〜!」と笑う。
ブルーノ先輩、大丈夫ですか、とヴィットリオが心配そうに言う。クラス中の視線を浴びてブルーノは、「うるせえ、やるよ!」と虚勢を張った。石を持つ手はやはり震えている。
あんな状態では事故になりかねない、とジオが動いた。ブルーノというよりむしろ至近距離にいるイリヤのためだったが。
そして火は点された……かに、思われた。