魔術師と下僕
魔術学校の居候
なぜ自分が校庭の石拾いなんかしなくてはならないのかーーと、レンは十歩に一回くらい思ったが、次の三歩で忘れた。以下、この繰り返し。
タミヤはまともな職、そしてまともな住まいが見つかるまで。という条件で、レンを魔術学校の居候にするよう口利きをしてくれた。が、レンは職も住まいも探せないままに、ずるずるとここに居着いてしまっている。
バケツいっぱいに集まった石をこの仕事の依頼主であるライナルトに渡しに行ったとき、めずらしく校舎が騒がしかった。
「いつもすみません。いろいろ頼んでしまって」
「仕事だからな。登校日か?」
「ええ、今回は四日間です。この石も、あの子たちの授業で使うんですよ」
ふーん、とレンは興味なさげに言う。
と、その時。目つきの鋭い黒髪の男と、伏し目がちの少女を見つける。
「ジオルタ?」
「ああ、新任の講師の方ですよね。お知り合いですか?」
「知ってるっつーか、弟弟子だよ」
「へえ! そうですか。じゃあ良かったですね、知ってる人がいると心強いじゃないですか」
「そういうもんか」
レンはジオルタのことを思い出す。後から入ってきたくせに、ちょっと優秀だからってくそ生意気に振る舞っていた嫌味な男のことを。
ーー当時の怒りと屈辱が、ふつふつとレンの胸に蘇ってきた。
「覚えとけよ、ジオルタ」
当時何度言ったかわからないセリフを口にして、レンは何年か越しの復讐を誓うのだった。