魔術師と下僕
余裕の態度を見せてはみたが、ジオは内心ゾッとしていた。普段であればどうということはないが、あいにく今は風邪をひいている。
「お前が苦手な電撃だけ特訓したんだ。お前に一発お見舞いするためにな」
レンブラントの拳にはまだ力が残っている。バカのバカ力だ、当たったらただでは済まない。レンブラント相手に本気を出さなければいけないのは癪に障るが、一刻も早くイリヤを取り戻したかった。
「お前の頑張りはよく分かったよ、レンブラント」
レンブラントの攻撃が掠った脇腹に、青い光がまだ燻っている。ジオはそれを掬い取るようにして自分の拳に握り込むと、ぐっと力を込めた。ジオの手の中で、どんどん光が大きくなる。色は青ではなく紫だ。
そしてレンブラントに向かって手をかざす。ドン、と大きな音がして、レンブラントはよろめきながら振り向いた。すぐ後ろの壁に、大きな穴が開いていた。
「僕が電撃を克服しようとしないわけがないことまでは考えられなかったみたいだけど」
「クソが!」レンブラントが吠えた。「否定形だらけで何言ってんのかよくわかんねえんだよ!」
レンブラントはジオに飛びかかろうとする。