魔術師と下僕
が、もはや身動きすることはかなわない。
壁の穴から出てきた真っ黒い無数の手が、レンブラントを瞬時に羽交締めにしたのだ。
「離せ!」
全力で暴れても、グミのような質感のそれはより強くレンブラントを締め付けた。
ジオはイリヤに近づこうとしたが、レンブラントは「来るんじゃねえ!」と叫び、拘束の隙をついてイリヤの足元へ電撃を放つ。
「イリヤ!」
電撃は椅子の脚に当たり、イリヤは床に転がり落ちた。その衝撃で目が覚めたイリヤは、状況が飲み込めず二人を交互に見比べる。
「ジオ……?」
イリヤのワンピースの裾が、少し焦げてしまってるのを、ジオは見つけた。その瞬間、
「ぎっ」
レンブラントを拘束する黒い手の力がさらに強くなる。
「よくも僕の下僕に手出ししてくれたね」
「うるせえ!」
レンブラントはーー今度は真っ直ぐ、手のひらをイリヤに向けた。
「イリヤ!」
その時、ジオが口の動きだけで何か言ったのを、イリヤは見逃さなかった。
か え る
イリヤはすぐに小さなカエルになり、彼女がいたはずのところにレンブラントが今打てる最後の電撃がぶつかり、床を焦がした。