魔術師と下僕

 カエルのイリヤをーー体がこわばっているのでやはり嫌そうに見えるーー両手に掬うようにして持った。

 そして、ジオはカエルにキスをする。
 変身を解くこと以外に意味がない、触れるだけのキスを。

 イリヤはいつものイリヤの姿でジオの前に立つ。けれど、


「…………あ、ありがとうございます」


 前にした時とは明らかに違う感情が芽生えているのが、イリヤにはわかった。

 助けに来てくれたことにちゃんとお礼をいいたかった、それだけなのだが、ジオの顔を全く見られなくなっていた。

 自分は恥ずかしがっている。ーーけれど、それだけではない。

 なにかと理由をつけては見ないように見ないように頭の中から追い払っていた感情を、イリヤはついに見てしまった。

 そうだ。
 自分はジオが好き、なのだ。

 しかも、恋という意味で、である。
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