魔術師と下僕

 久しぶりの、対面授業の期間である。


「でかくなったなイリヤ。順調か」
「はい、順調です!」
「そうか! よし!」


 レンは会えばいつも親戚のおじさんみたいに話しかけてくる。地下室の壁の穴の修理費用はレンとジオで折半することになり、今はきれいに無くなった。

 そして。


「なんだ居候。こんなところでサボってたのか」
「……げっ」
「アタシの部屋の掃除機がけがまだ終わっていないみたいだな」
「わかったよ! やりゃいんだろやりゃ!」


 ……とても上司と話す態度には見えないが。この長い黒髪の美しい女性はレンブラントの上司で、この学校の校長だ。名前をミラルダという。これだけ美しいと、魔法で若さを保っているのでは? と思う者もいるが、ぜんぜんふつうにただの才能である。

 レンブラントはそんな迫力のある美人に首根っこを掴まれて校長室に戻って行った。

 実は、ジオとの喧嘩に生徒を巻き込んだという理由で地下室の使用を禁じられ、以来校長室をパーテーションで仕切っただけの一角で主に過ごすことになった。プライバシーゼロ。なにかといえば「お前のせいでアタシの部屋が狭くなった」と言われる生活。ほとんど軟禁である。

 それでも追い出されなかったのは学校側の精一杯の温情だったし、結果的に生徒と距離が近くなり、「みんなのお兄ちゃん」的ポジション(と自分では思っているようだ)として、それなりに生き生きやっているようだったが。

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