魔術師と下僕
放課後の教室。
寮に向かおうとしていた実習班メンバーは、少女の声に呼び止められた。
「ねえ」
「はい?」イリヤが振り返る。
そこには、白く長い髪に、白い服の少女がいた。真っ白姿のなかで、首輪の赤が目立っている。
この学校はそもそも派手な生徒が多いが、彼女はその中でも目立つ部類だと思われた。だから、同じクラスでないことはすぐにわかる。
彼女はずかずかイリヤに近づいて、大きな青い瞳を、じっと近づけた。
「あなた、ライナルトの知り合い?」
いきなり先生を呼び捨てするので、みんなは驚く。
知り合いかと訊かれると微妙だなと思いながら、「まあ、生徒です」とイリヤは答えた。それにしても、この真っ白い少女は距離が近い。さっきから、イリヤはじりじりと後退しているのだが、じりじりと詰め寄ってきていた。「そう、生徒なのね」と彼女は言った。
「私、シルフィって言うの。あなたは?」
「イリヤです。……あの、シルフィさんって、ライナルト先生の猫ちゃんと同じ名前なんですね」
不思議に思ってそう言うと、シルフィは平然と言う。
「そうだよ。私、猫だもん」