魔術師と下僕
様子がおかしいナターリアは、「そんなことより! シルフィさんは? なんかないすか、猫視点で!」とわかりやすく話を逸らした。するとシルフィは、実に素直に答えた。
「シルフィ? シルフィはライナルトが好きだよ!」
その堂々たる口調に、三人ともおお、とどよめいた。ナターリアでもイジる気になれず、その迷いのなさにひたすら感心している。
でも、とシルフィは続けた。
「みんなは人間同士だから、羨ましいな」
そうだった。三人はいまさら思い出す。今は人間の姿をしているから忘れていたけれど、シルフィとライナルトには種族の違いという高すぎる壁があるのだった。
こればかりはどうすることもできない。余計なことは言えない、という、ある種気遣いに満ちた沈黙が流れた。
しかし、その沈黙は長くは続かなかった。
部屋のドアが、壊れたんじゃないかというぐらいの音を立てて開かれたのだ。シルフィは驚いて跳び上がり、すごい速さで物陰に隠れた。
「ジオルタ! 表出ろコラァ!」
……作業服姿のレンである。ジオがいないので、あれ? という顔で部屋を見回している。そして、言った。
「ジオルタは?」
「レンさん、ここ女子寮です」
え、そうなの、とレンは目を丸くした。