婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
 抱きしめられる前に、私は二歩後退した。その様子を見た彼の形のいい眉が片方上がる。

「突然ごめんなさい」

「そんなのはいい。どうしたんだ? ひとりで来たのか?」

 溺れたみたいに苦しくなった肺に空気を入れたのち、彼を見つめる。

「亜嵐さん……婚約解消してください」

 コートの中に隠すように入れていたショルダーバッグからエンゲージリングの入った小さな箱を取り出して、あぜんとなる彼の手にそれを握らせた。

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