婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
「一葉ちゃん、ご家族が難色を示した場合は連絡してね。亜嵐と私が説得にお伺いしますから。さあさ、いただきましょう」

「はい」

 父に話すのは正直躊躇してしまうが、ここは祖母を頼ろう。

 亜嵐さんに送ってもらい家に入ると、両親と祖母がちょうどリビングに集まっていて、みんながいるソファに腰を下ろした。

「お帰り。楽しかったかい?」

 亜嵐さんに会うことを包み隠さず母や祖母に話していたから、父の耳にも入っているだろう。

「うん。お父さんたちに話があって」

 テレビへ顔を向けていた父だけど、それはフリだったらしくピクッと手が動き、こちらへ視線を向けた。父は口もとをゆがめていて、嫌々な感じを受ける。

「一葉、行ってごらん」

 祖母が口火を切ってくれて、話しやすくなる。

「私、亜嵐さんが好きになったの。結婚してもいいと思っている。今は学業を優先して、大学卒業後に結婚を」

「そうかい! 一葉、決めたんだね!」

 祖母は満面に笑みをたくわえ、両手を叩いてパチンと鳴らした。

 父を見れば、考え込んでいる様子。

「一葉、本当に結婚を決めていいの? まだ十八よ?」

「そうだそうだ。そんな若いうちから結婚相手に縛られるんだぞ」

 父は母の言葉に賛同する。

「うん。和歌子おばあ様も素敵な人だし、縛られるって、そんな心の狭い人じゃないわ」

「まだ数回しか会っていないのになにがわかるんだ」

「和夫、一葉が考え抜いて決めたことだよ。親なら祝福してあげようじゃないか」

「それは母さんが変な約束をしたからだろう?」

 父は両腕を体の前で組んで、プイッと斜め上を向く。

「お父さん! 私はおばあちゃんたちが約束をしてくれたおかげで亜嵐さんに会えてよかったと思っているの」

「ほらごらん、一葉は喜んでいるんだよ。そんな約束でも、一葉はいいところへお嫁に行けるんだからね」

「そりゃ、金のない男に嫁いで苦労するよりはと思うが……」

 父はこの先を憂慮しているみたいだ。

「お父さん、亜嵐さんに会ったらわかってもらえると思うわ」

「……会おうじゃないか」

「和夫! よく言った」

 祖母は半ば折れた父に祖母は拍手を送った。

 そうして翌週の日曜日、十五時に亜嵐さんと和歌子おばあ様が挨拶のためにわが家を訪れた。

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