婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
どうしてそんな顔をするの……? 私から先に切り出したから……?
「今は話せない。どこかに車を止める」
亜嵐さんは私から前に顔を動かし、青信号でアクセルを踏んだ。
しばらくすると、見慣れた都会のビル群を走っているのに気づく。
「亜嵐さん、カフェで話を……」
「いや、自宅へ行く」
すぐそこに亜嵐さんの住まいのあるレジデンスが視界に入ってきた。
和歌子おばあ様が亡くなってから一度も足を運んでいなかったので、広い玄関に立った途端、いつも優しく出迎えてくれたのを思い出して目頭が熱くなった。
今にもキッチンから出てきて『一葉ちゃん、いらっしゃい。待っていたのよ』と言ってくれるのではないかと錯覚してしまいそうだ。
「ソファで話そう」
自宅へ行くと言ったっきり無言だった亜嵐さんに、座るように示される。
いつも座っていた場所、三人掛けの端に腰を下ろすと、斜め横の和歌子おばあ様の定位置だったひとり掛けのソファに亜嵐さんが座る。
「花音さんは?」
出かけているのだろうか。話している最中に帰宅して気まずい思いをしたくないので尋ねる。
「隣のホテルに滞在している。一葉ちゃん、突然どうしたんだ?」
「もう和歌子おばあ様はいないから……」
「君は、祖母が亡くなったから約束を反故にしていいと? 俺を好きじゃない?」
亜嵐さんは開いた両脚に腕をのせて、私の方へ少し身を傾ける。
「す……好きですっ。でも、もともと私と亜嵐さんは違いすぎるし、今だって一緒に出かけはするものの並んで歩くだけで、触れるのは道で危ないときに腕を掴むくらい。そんなの婚約者って感じじゃないし」
「俺を煽っているのか?」
「えっ!?」
意味がわからなくてキョトンとなると、亜嵐さんの手が私の腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。
「きゃっ!」
力強く引っ張られ、気づくと私は亜嵐さんの膝の上に横向きに座らされていた。
「ど、どうして……?」
「俺が君に触れるのをどれだけ我慢していたかわかる?」
亜嵐さんは身長があるので、私が彼の膝に座っても目線は少し上なだけ。
彼の大きな手のひらが、私の首の横から後頭部にあてられた。
「あ、亜嵐さん?」
「はっきり言う。俺は一葉ちゃんに触れたい思いを抑えていた」
「今は話せない。どこかに車を止める」
亜嵐さんは私から前に顔を動かし、青信号でアクセルを踏んだ。
しばらくすると、見慣れた都会のビル群を走っているのに気づく。
「亜嵐さん、カフェで話を……」
「いや、自宅へ行く」
すぐそこに亜嵐さんの住まいのあるレジデンスが視界に入ってきた。
和歌子おばあ様が亡くなってから一度も足を運んでいなかったので、広い玄関に立った途端、いつも優しく出迎えてくれたのを思い出して目頭が熱くなった。
今にもキッチンから出てきて『一葉ちゃん、いらっしゃい。待っていたのよ』と言ってくれるのではないかと錯覚してしまいそうだ。
「ソファで話そう」
自宅へ行くと言ったっきり無言だった亜嵐さんに、座るように示される。
いつも座っていた場所、三人掛けの端に腰を下ろすと、斜め横の和歌子おばあ様の定位置だったひとり掛けのソファに亜嵐さんが座る。
「花音さんは?」
出かけているのだろうか。話している最中に帰宅して気まずい思いをしたくないので尋ねる。
「隣のホテルに滞在している。一葉ちゃん、突然どうしたんだ?」
「もう和歌子おばあ様はいないから……」
「君は、祖母が亡くなったから約束を反故にしていいと? 俺を好きじゃない?」
亜嵐さんは開いた両脚に腕をのせて、私の方へ少し身を傾ける。
「す……好きですっ。でも、もともと私と亜嵐さんは違いすぎるし、今だって一緒に出かけはするものの並んで歩くだけで、触れるのは道で危ないときに腕を掴むくらい。そんなの婚約者って感じじゃないし」
「俺を煽っているのか?」
「えっ!?」
意味がわからなくてキョトンとなると、亜嵐さんの手が私の腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。
「きゃっ!」
力強く引っ張られ、気づくと私は亜嵐さんの膝の上に横向きに座らされていた。
「ど、どうして……?」
「俺が君に触れるのをどれだけ我慢していたかわかる?」
亜嵐さんは身長があるので、私が彼の膝に座っても目線は少し上なだけ。
彼の大きな手のひらが、私の首の横から後頭部にあてられた。
「あ、亜嵐さん?」
「はっきり言う。俺は一葉ちゃんに触れたい思いを抑えていた」