婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
「これから伺うお宅なんだけどね、五歳年上の和歌子(わかこ)ちゃんというの。近所に住んでいて、いつも一緒だったんだよ。そうねぇ、十八歳くらいまでだったか。お父さんの仕事の都合でイタリアへ行ってしまってね」
祖母は昔を懐かしむように話し始めた。
イタリアへ行った和歌子さんは、向こうでイタリア人の男性と恋に落ちて結婚したという。
祖母たちはときどき葉書や手紙でやり取りをしていた。それは私も知っている。郵便ポストに素敵な景色の絵葉書が入っているのを何度も目にしていたから。
その和歌子さんは息子をひとり産み、三人の孫に恵まれたという。長い間、イタリアのフェラーラという街に住み、年を取ったので日本が懐かしくなって、一年の何カ月かは日本で過ごす生活を始めたという。
祖母たちは十年間会っていなかったが、固く結ばれた友情は変わらず、今回会いにいくという。
「六本木なんて一度も行ったことがないから、一葉がついてきてくれて助かるよ」
和歌子さんは六本木の高級ホテルの隣にあるレジデンスに住んでいるらしい。
「私だって六本木へは数回しか行ったことがないわ。でもおばあちゃんが迷子になったら困るのは確かね」
向かうところが六本木だから、おしゃれな服を着なさいと言ったのね。
大学生の私にとって六本木は大人の街。友達と映画を観に数度行ったとき、洗練された素敵な人をたくさん見かけた。
それにしても、高級ホテル自体にも足を踏み入れたことがないので、ちゃんと祖母を案内できるか不安ではある。
和歌子さんから聞いた六本木駅の出口からの行き方をメモに控えていたので、すぐにレジデンスのエントランスに入ることができた。
ドアマンがいて、コンシェルジュデスクもある。
ガラスの扉で仕切られている手前にあるパネルに部屋番号を入力すると、明るい声が聞こえてきた。
《政美(まさみ)ちゃん! いらっしゃい! どうぞ上がってらして》
目指す部屋は四十五階建ての最上階だった。
祖母に言われた番号をタッチパネルに入力し、私はギョッとなった。
祖母の大親友はセレブのようだ。
ガラスの扉が開かれ祖母が歩を進め、私も後に続く。
祖母は昔を懐かしむように話し始めた。
イタリアへ行った和歌子さんは、向こうでイタリア人の男性と恋に落ちて結婚したという。
祖母たちはときどき葉書や手紙でやり取りをしていた。それは私も知っている。郵便ポストに素敵な景色の絵葉書が入っているのを何度も目にしていたから。
その和歌子さんは息子をひとり産み、三人の孫に恵まれたという。長い間、イタリアのフェラーラという街に住み、年を取ったので日本が懐かしくなって、一年の何カ月かは日本で過ごす生活を始めたという。
祖母たちは十年間会っていなかったが、固く結ばれた友情は変わらず、今回会いにいくという。
「六本木なんて一度も行ったことがないから、一葉がついてきてくれて助かるよ」
和歌子さんは六本木の高級ホテルの隣にあるレジデンスに住んでいるらしい。
「私だって六本木へは数回しか行ったことがないわ。でもおばあちゃんが迷子になったら困るのは確かね」
向かうところが六本木だから、おしゃれな服を着なさいと言ったのね。
大学生の私にとって六本木は大人の街。友達と映画を観に数度行ったとき、洗練された素敵な人をたくさん見かけた。
それにしても、高級ホテル自体にも足を踏み入れたことがないので、ちゃんと祖母を案内できるか不安ではある。
和歌子さんから聞いた六本木駅の出口からの行き方をメモに控えていたので、すぐにレジデンスのエントランスに入ることができた。
ドアマンがいて、コンシェルジュデスクもある。
ガラスの扉で仕切られている手前にあるパネルに部屋番号を入力すると、明るい声が聞こえてきた。
《政美(まさみ)ちゃん! いらっしゃい! どうぞ上がってらして》
目指す部屋は四十五階建ての最上階だった。
祖母に言われた番号をタッチパネルに入力し、私はギョッとなった。
祖母の大親友はセレブのようだ。
ガラスの扉が開かれ祖母が歩を進め、私も後に続く。