婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
 わが家の一階と二階を合わせても足りないくらいの広いラグジュアリーな部屋に、ハイブランドの箱が大小数えきれないほど積まれていた。

 大学生の私でもわかる有名なブランドの箱の数々に、目を丸くする。

「亜嵐さん? これは……?」

 このスイートルームのオブジェなのだろうか。雑誌に載っているブランドの企画ページのようだ。

「誕生日プレゼントだ」

「で、でも、クルーズ船の貸しきりのディナーや、こんなに綺麗な花束も……」

「一葉、素直に喜んでもらえればうれしい」

 亜嵐さんは私が抱えていた花束をすぐ近くのテーブルの上に置く。

「なにからなにまでありがとうございます。すごくうれしい……」

 ドキドキしていて、一歩亜嵐さんに近づく脚も震えているが、彼に歩を進めて抱きついた。

「俺は一葉を甘やかしたいんだ。喜ぶ顔を見たい」

 亜嵐さんの長い指が、肩甲骨ほどの長さの髪を優しく梳くように行き来する。

「私も亜嵐さんの笑顔が大好きです」

 甘く微笑みを浮かべた亜嵐さんは私の顎を指でそっと持ち上げ、唇を重ねる。

 彼のキスには免疫ができている。キスのたびに物足りないくらいだった。でも、今のキスはいつもと違っていた。

 亜嵐さんの舌が歯列を割って、上あごをなぞり、私の舌に絡ませる。

「んっ、ふ……」

 この先を考えると、心臓は痛いくらいに激しさを増す。

 でも、この時を私は待っていた。

 亜嵐さんに愛される日を。

 私をお姫様だっこした亜嵐さんは部屋を横切り、ベッドルームへ向かうようだ。

「やっと俺のものになる」

 彼の腕の中で、コクッとうなずくのが精いっぱいだ。

 広さのあるベッドの上に、亜嵐さんは私をまるで壊れ物のように静かに寝かせる。そして私を組み敷くようにして見下ろした。

 彼を取り巻く空気がいつもと違う。

 亜嵐さんは存分に男の色香を漂わせていて、私はぼうっと彼を見つめるばかりだ。

「どうした?」

 スーツのジャケットを脱いで、ベッドの足もとにあるフットベンチの方へ放る。

「亜嵐さんの色気がだだ洩れで……」

 正直に口にすると、彼はふっと笑みを漏らしネクタイを緩め、ベストを脱いだ。

「一葉は清らかで、俺に汚されるのかと思うとこれでいいのかと自問してしまうよ」

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