婚約破棄するはずが、極上CEOの赤ちゃんを身ごもりました
【二十時二十分発のフライトで飛ぶ。二カ所の経由があるが、それが一番早く着く。また連絡するよ。送れずに済まない。気をつけて帰るんだよ】
亜嵐さんの心境を考えると、胸が痛くなる。
これから出国の準備で忙しいだろう。
私は簡単に返事を打って、スマホをバッグにしまった。
「ただいま」
家に着いたのは十七時で、母がキッチンで夕食の準備をしていた。珍しく翔がソファに寝そべっていた。
「あれ? 姉ちゃん、今日は亜嵐さんとデートじゃなかったのか?」
むくっと体を起こして冷やかしの目を向けてくる。
「まあね。亜嵐さんに急遽用事ができちゃって。お母さん、私の分あるかな?」
そっけなく言って翔から離れ、キッチンに入る。味噌汁や煮物の匂いがする。
「大丈夫よ。急に用事ができて帰ってきたなんて初めてじゃない?」
「うん。実は亜嵐さんのお兄様が、試運転中に事故に遭ったって連絡が入って。今夜ハンガリーに飛ぶの」
「まあ! それは大変じゃない」
母は包丁を持つ手を止めて、私へ顔を向ける。
「そうなの。救急搬送されたって。お兄様も心配だけど、亜嵐さんも心配……。私にできるのは連絡を待つだけで、なんか落ち着かないの」
「それはそうよ。いずれ家族になるんだから。今は考えてもどうにもならないわね。とりあえず手を洗ってきなさい」
「はい」
母に促されて奥の洗面所へ足を運んだ。
亜嵐さんから連絡があったのは二日後の就寝前だった。
連絡が遅くなってすまないと言ってくれたけれど、フライト移動にかなりの時間を要して、さらにお兄様の件で忙しいのに、私への電話を忘れなかった彼に申し訳ない気持ちになった。
お兄様は火傷と脳挫傷、複数の骨折もあり、意識が戻っていないそうだ。
連絡を待つ間、居ても立ってもいられなくてインターネットで検索したが、容態について詳細に書かれた記事はなかった。
所属チームや亜嵐さんがなにかしらの手を打ったのかもしれないと思っていたが、お兄様のひどい状態を聞いて言葉を失った。
《一葉、大丈夫か?》
「あ、うん……なんて言ったらいいのか……」
亜嵐さんの心境を考えると、胸が痛くなる。
これから出国の準備で忙しいだろう。
私は簡単に返事を打って、スマホをバッグにしまった。
「ただいま」
家に着いたのは十七時で、母がキッチンで夕食の準備をしていた。珍しく翔がソファに寝そべっていた。
「あれ? 姉ちゃん、今日は亜嵐さんとデートじゃなかったのか?」
むくっと体を起こして冷やかしの目を向けてくる。
「まあね。亜嵐さんに急遽用事ができちゃって。お母さん、私の分あるかな?」
そっけなく言って翔から離れ、キッチンに入る。味噌汁や煮物の匂いがする。
「大丈夫よ。急に用事ができて帰ってきたなんて初めてじゃない?」
「うん。実は亜嵐さんのお兄様が、試運転中に事故に遭ったって連絡が入って。今夜ハンガリーに飛ぶの」
「まあ! それは大変じゃない」
母は包丁を持つ手を止めて、私へ顔を向ける。
「そうなの。救急搬送されたって。お兄様も心配だけど、亜嵐さんも心配……。私にできるのは連絡を待つだけで、なんか落ち着かないの」
「それはそうよ。いずれ家族になるんだから。今は考えてもどうにもならないわね。とりあえず手を洗ってきなさい」
「はい」
母に促されて奥の洗面所へ足を運んだ。
亜嵐さんから連絡があったのは二日後の就寝前だった。
連絡が遅くなってすまないと言ってくれたけれど、フライト移動にかなりの時間を要して、さらにお兄様の件で忙しいのに、私への電話を忘れなかった彼に申し訳ない気持ちになった。
お兄様は火傷と脳挫傷、複数の骨折もあり、意識が戻っていないそうだ。
連絡を待つ間、居ても立ってもいられなくてインターネットで検索したが、容態について詳細に書かれた記事はなかった。
所属チームや亜嵐さんがなにかしらの手を打ったのかもしれないと思っていたが、お兄様のひどい状態を聞いて言葉を失った。
《一葉、大丈夫か?》
「あ、うん……なんて言ったらいいのか……」