わがままシュガー


『感情を人と比べない、人の気持ちを勝手に疑わない、自分を否定しない』

『和香の本当の気持ちは、どこにあるの?』



背中を押してくれた緑の言葉を思い出す。



比べない……妹だろうが、他の誰が相手だろうが、比べない。

私は、私で。



気持ちを疑わない……佐藤の気持ちがすぐに離れていっちゃうとか、自分と釣り合わないだとか。

そういうのは悪い想像でしかないし、それに佐藤を疑ってることになる。



自分を否定……しないのはちょっと、今後の自分に期待する、として、頑張るから。

すぐにはこんな自分は変えられないから。



――――私の気持ちは?

もう、こんなにもはっきりとしている。

だったら迷うことない、逃げることない。



佐藤は今、ぶつかって来てくれてるじゃない。

それに向き合うタイミングは――今、でしょう?



「……ひょう」

「――え」

「氷」



言い慣れないその名前を口にして、私も恐る恐る、佐藤の……氷の背中に手を回した。

ピクリと反応するその体は、また私をキュッと強く抱きしめて、深く息を吐き出す。



「和香」

「うん」

「俺、和香の男になりたいんだけど」

「……っ」



込み上げてくる、なにか。

期待と、喜びで、体の奥底からゾクリと湧き立ち、鳥肌が立つ。
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