わがままシュガー


どくどく、高鳴る心臓の音は、聞こえていないだろうか。

熱くなる顔は、抱きしめられているから、見られはしない。

けれど私も……その氷の顔が、見えない。



「のどか」



優しい声で、求愛してくるような、甘い声。



「俺をあげるから、和香をちょーだい」



首をすりすりと擦られると、簡単に頭の中が真っ白になる。

欲しい、欲しいと思ってしまう。



いや、いいんだ、欲しくなって、いいんだ。

自分のかけた呪いは、自分で解かなければ、前になんて進めないのだから。



「私も、ほしい」

「……っ」

「氷が……その、うわっ」



痛いくらいにぎゅーぎゅーと締め付けられる腕に、呼吸することも苦しくなる。

ばか力、あくまで男の力なんだ、私が勝てるわけもない強い力。

いや、戦っているわけ、では、ないはずなのだけど。



「もうダメ、好き。和香が大好きで俺溶ける」

「溶けるの?」

「溶けるから、和香も一緒に溶けて」



なんて無茶言いやがる。

なんて心の中でツッコミを入れている間に、首筋にきゅっと吸い付かれていて、その頭を離そうと藻掻く。



前言撤回、私たちは戦っていたのかもしれない。

ちょっと待って、今首に何をしたんだこいつ。
< 127 / 136 >

この作品をシェア

pagetop