わがままシュガー


「酒扱うところは、そーいうやつ多いんだよ」

「お酒ね」



店の名前や業種を避けた言い方をしたということは、ここから先は聞いてほしくない話なのかもしれない。

そう思い、私は視線を再びスマホの画面に戻した。



佐藤には、こちらが聞くと避ける話がある。

それは、家族のことや、自分の深い所や……名前、まで。



佐藤は名前で……蜜と呼ばれることを嫌がり、最初会った頃には既にそうお願いされていた。

『蜜』という名前が、自分には合わないからだと。



だから私も、緑も、鞠も、佐藤のことは名前で呼ばない。

佐藤だけが苗字を好むから、佐藤を佐藤と呼ぶ私たち。



「佐藤、ほんとは今日何しに来たの」



学生時代の佐藤を眺めながら、そんなことを聞く。

正直、全然頭は働いてないから、佐藤がなんか難しい話をし始めた所で、私はちゃんと話せる余裕はないと思う。



佐藤が勝手にレンジでチンして温まり終わった軽い音が、狭い一人暮らしの部屋に響き渡る。

いつの間にレンジを使っていたのか、自由人だなほんと。



「和香に、消化のいいもの食べさせたげよと思ってー!」



急にギャルモードに切り替えた佐藤がルンルンとレンジから何か取り出して来る。

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