わがままシュガー
ふとそんな風に、こんな誰が通りかかるかもわからないところで尋ねられたもんだから、思考も動きも止めて佐藤を見上げる。
「……いや、男なんでしょ、アンタがそう言ったんじゃん」
「そうじゃなくてぇー、なぁんか緑に負けてる気がして」
「負けてるも何も、何を競ってるの?」
そう私が聞き返すと、とても残念な人を見るような佐藤の視線が、私をズキズキと突き刺した。
待って、そんな憐みの瞳を向けられるようなことした覚えは、私の方には一ミリもないんだけど。
「なぁんで和香にだけ話したと思う?」
「それは、私がなんでも受け入れそうだからって……酔っ払いの佐藤が言ってたんじゃない」
「……もしかして酔った勢いで暴露されたとか思ってる……?」
むしろそれ以外の何があるのだろうかと、そう私が思ったところで。
「さとちーん!のどー!何話してんのー!?」
キャッキャとしたテンションでこちらに駆け寄ってくる鞠に、私たちの話は強制終了されることになる。
佐藤が何を伝えたかったのかは、結局わからないままだった。
「あ、お猿さんだよぉぉぉ!!!」
子供のようにはしゃいでいる鞠を見ると、そんなことも忘れてしまいそうになる。