わがままシュガー
佐藤に顔を向けにくくて外していた視線の先、左手を持ち上げられると、私の冷たい手が佐藤の熱に触れる。
「指輪、とかなら外さなくていーかも」
するりと触れる指先が、私の指先全体を覆う。
「つけ、ない」
「えー、和香なら絶対似合うのにー」
「指輪に似合うも何も……」
「あるよぉ。和香の指は細くて長くて綺麗で……顔だって美人さんなんだから」
そうやって頬に触れる指先は、今朝緑に撫でられた場所をなぞるように、同じように触れる。
緑とは違う、頭が熱くなるような感覚に、戸惑う。
ふっとからかうように笑う佐藤が、繋がれていた指先をまたきゅっと握る。
「細くて綺麗な指輪が似合うと思うなぁ」
「そう、なの。ねぇもう手、いいでしょ。離して」
「和香の手ぇ冷たいから、今ならあーしがあっためてあげるけどぉ?」
「いい。私あっち見て来る」
「つれなぁい」
ぬいぐるみのコーナーでペンギンのぬいぐるみを手に取って、小さく溜め息を吐く。
何だったんだ、確かに佐藤ならピアスも指輪も似合うだろうけど……指輪、は、佐藤はしてなかったな。