わがままシュガー
瞼を閉じる前、ゴンドラの景色は頂点に差し掛かる手前だった。
迷いがありながらも何度も食まれる唇に、どうしたらいいのかもわからなくなって。
気付いたら指先で上を向かされて、舌で唇を撫でられて、緩やかに侵入してくるそれを……受け入れている自分がいて。
思いの外、心地の良い柔らかさに浸っている自分がいて。
どうして受け入れてしまっているのかも、自分のことなのにわからなくて。
観覧車で四分の三が過ぎる頃、ようやく口が離された。
「ばか……なんで受け入れんだよ、止まらなくなったじゃねぇか」
呆然と俯く私を見て、佐藤はため息を吐く。
「……ごめん、和香。ごめん、ほんと最初は自分の気持ちがこんなんなるとは思ってなくて、気付いたら和香のことばっかり、考えるようになってて」
静かな空間の中で、それは告げられる。
「だから和香、はやく俺を好きになって」
「……なに、それ」
わがまま。
そんな告白、聞いたことない。
これが告白なのかすらも……わからないけれど。
けれどそんな言い方が、佐藤の見慣れない男の姿の中で唯一、佐藤らしさを残していて。
ふっと息を吐いて笑っていた。