わがままシュガー
それは、自分でも全く気付かなかった、変化と言えるかもわからない程の微妙な変化。
「ほら和香って基本めんどくさがりだけど。この前の――カラオケとかさ。自分から誘ってきたじゃない。アレ佐藤は嬉しかったんじゃない?」
「アレ、は、だって」
「マリモはともかく、私だって最初は気付いてなかったよ。佐藤が何かを気にして沈んでたことなんて」
――そう、あの日。
あの飲み会をするには中途半端なあの日、私は佐藤の違和感に気付いて、佐藤に尋ねていた。
『何かあった?』
『なにがぁ?』
『何か気にしてるでしょ』
その前日、佐藤はバイトだったはずだから、そこで何かあったんじゃないかと思って、私はそう聞いた。
『和香って、鋭いんだか鈍いんだか、ほんとわかんなぁい』
そうくすくす笑った佐藤がまた何かを思い出すかのように一瞬動きを止め、またいつものように笑う。
『佐藤の気にしてることは、どうにか出来ること?それともどうにもできないこと?』
『うーん……どうにもできないなぁ。時間が解決してくれるっしょ』
佐藤にしてはへたくそな笑みを作るから、どうしてあげられるのか、私にしてはいろいろと考えて、それから。