わがままシュガー
2
夢を見た。
佐藤がこちらに手を伸ばしていて、私はその手を握ろうと手を伸ばすけれど。
別の方向から名前が呼ばれる。
そちらには緑と鞠の二人がいて、私を誘っている。
私は悩む。
佐藤の方に行くか、緑と鞠の方に行くか。
なんで反対方向にいるの?
なんで……一緒じゃダメなの?
ずっと一緒に、いたじゃない。
これからもずっと一緒に、四人でいるでしょう……?
佐藤が伸ばしていた手を下ろす。
なんで……なんで下ろしたの?
なんで背を向けようとするの?
なんで、行かないで、どこにいくの、私を置いて──
「いかないで」
薄暗い部屋の中、ポツリと自分の響いた声が耳に届いた。
「……夢」
なのに、喪失感がすごくて。
寂しくて、苦しくて、戸惑ってしまう。
いつも通りの、一人暮らしの小さな部屋の中、カーテンの奥はまだまだ暗い。
手探りでスマホを探すけれど、いつも置くベッドの端には置いていなくて。
あぁそうだ、机に置いていて、佐藤が家に来て、お酒飲んで、佐藤が────。
佐藤、は?帰ったの?今何時?
ぴか、ぴか、光るスマホの明かりは緑色。
起き上がってスマホに受信しているメッセージを開くと、佐藤からだった。