わがままシュガー
なんて、一瞬変な発音に気を取られたけれど、蜜という名前に思い当たる人物が一人しかいなくて反応する。
「佐藤をご存知なのですか?」
なんといっても、あの佐藤だ。
ガラの悪い人達に囲まれて煙草を吸っていた印象の強い、過去の佐藤の写真。
今はギャルなんてしているし、私たち学生の他に佐藤を知る人と会ったことはなかった。
「あぁ、身内だよ」
「身内……って」
『あーしの叔父さん、理事長なんだけどねぇ?』
この学校で、佐藤の身内と言えば、あの言葉しか聞いた事がない。
「理事長……?」
「おや、ひょ……蜜に聞いていたのかい?それなら話が早いかな」
さっきからその『ひょ』はなんなんだろうか、地味に気になる。
理事長といえば、校内イベントの時くらいにしか姿を現したところを見たことがない。
それも、この大学の学生数はとても多いから、理事長が壇上に立っていたとしても豆粒ほどにしか見えないことばかり。
なので、しっかりと顔を合わせたのは、これが初めてだ。
「というか、ここで一緒にいる所を見たということは、ギャル化した佐藤でも見分けがつくということですか?」