わがままシュガー
「ははっ、わかるさ。あの姿で時々理事長室まで来るんだ。それを聞くのは君にこそ、あいつは本来の姿のことを話したってことかい?」
「……あ」
つい、理事長が佐藤を男だと知っている前提で話していたから、私にそれを打ち明けたことを知っているかなんて考えないで発言してしまっていた。
言っていいのか?わからないけれど。
けれどもう、バレてしまっているならいいだろう、うん。
「えぇと、最近……打ち明けられまして」
「そうか、うん。そうだったか」
なにかを噛み締めるように、嬉しそうにそう呟く彼に、小さな違和感を抱く。
『大学で淑女らしく大人しくしてるならいいよーって条件』
こんなにも優しそうな人が、佐藤を大事にしていそうな人が……本当に佐藤に淑女を求めたのか?
あのギャルの姿で会いに行っているとするなら、ギャルの姿は淑女とはかけ離れていると、思うのだけれど。
それは、いいの?
それに佐藤のことだ、懐いてもいない相手の所にわざわざ足を運びなんてしないだろう。
何かが食い違う。
「ひとつ、いいですか」
「なんだね」
「佐藤が大学に入る時、あなたが──佐藤に求めたモノは、なんだったんですか」