わがままシュガー
淑女を求める割には、あまりにも佐藤は自由に動けている。
鞠と一緒に自由奔放だ。
この学校の支配者であるなら、そんな佐藤になんていくらでも制限はつけられるだろうに、佐藤からは一切制限されているようには感じない。
コネで入る為に作られた上辺だけの理由?
それなら、女装の意味は、なぜ?
本当に佐藤の趣味……?
いや、佐藤からその事については一切、聞いたことが無い。
自分の意思なのか、他人から求められたことなのか。
「私があの子に求めたモノ……?」
「はい」
彼はふっと柔らかに笑う。
それがどことなく、佐藤の柔らかな笑みと重なって見えた。
この人は、やっぱり──
「ただ生きて、元気に過ごしている姿を見ていられるだけで、私は満足なんだよ」
──佐藤のように、思いやりの深い人だ。
違う、この人は佐藤に『淑女』なんて求めていなかった。
それどころかきっと、本当に特別なことはなにも求めていない。
ただ元気で過ごしていること、それだけを求めているとするなら……。
それならなんで佐藤は……嘘を、ついていたの?
「叔父、さん?」
聞き慣れた、男にしては高めのハスキーボイスに振り返ると、そこには佐藤だけがいた。