わがままシュガー
またしょぼくれる佐藤に、私は溜め息をついてからそのウィッグ越しの赤毛の頭に触れ、よしよし、と撫でる。
別に責めたいわけでも、佐藤を軽蔑しているわけでもない。
ただ、私も少し混乱しているだけ、なんだ。
「妹が、いる。三つ下の」
「うん」
三歳下、ということはまだ未成年で、高校生か。
「……蜜は今病院で……ずっと、眠ってる」
「ずっと……?」
「三年前、親の車で事故を起こした時から、今までずっと」
――それはつまり、植物状態ということ?
というかこの話は恐らく、佐藤にとって一番人に話しにくいことではないだろうか。
蜜という妹の名前を使って生活していたくらいなんだから。
「佐藤、それ、本当に私が聞いていいの?」
「言ったでしょ、和香には遅かれ早かれ話す気でいた。和香が嫌じゃなければ、聞いて欲しい」
私は考える間もなく答えていた。
「……もちろん、聞く」
今日も綺麗に赤くネイルされている指先で一口お茶を含む佐藤。
豪快なように見えて、一つ一つの仕草は丁寧で綺麗だ。
この人が本当に、高校生まではガラの悪い人達に囲まれていたヤンキーだったと……誰が気付けるというのか。