獅子組と私
飛鳥が突然大きな声を出し、一喝したのだ。
すると、人が真っ二つに割れた。

朝の通勤ラッシュ。
群集の中、飛鳥の声が綺麗に通り響き渡ったのだ。

「え?え?飛鳥くん?」
「椎那、これで行きやすいよ!」
椎那にニコッと微笑んで、促したのだった。

「椎那ちゃん、行こ?」
「へ?いや…なんか…これ……」
「椎那ちゃん、早く!」
「おっ!行きやすくなった!」
「さすが!キング!」
少し退き気味の椎那。
道彦達は特に何も気にせず、堂々と歩いていく。

「まぁこのくらいやんねぇと、椎那ちゃんが危ないしな!」
道彦が言った。
「飛鳥くん!ちょっと、やりすぎじゃ…」
「でも、椎那がこれ以上傷つけらないとは限らないし!
だって、ここからは階段だからね!
突き落とされたら大変でしょ?」
恐縮している椎那の手を引く飛鳥だった。

職場であるレストランに着き、飛鳥と椎那だけ裏の従業員出入口に向かう。
「じゃあね、飛鳥くん。
ありがとう!送ってくれて!」
「当たり前だよ!」
「………」
「………」
なかなか手を離さない飛鳥。

「飛鳥くん、手を離して……?」
「うん…」
「手を離してくれないと、私…仕事行けないよ?」
「うん…」
「飛鳥くん?」
「………椎那、キスしよ?」
「え!?ここで?」
「うん…キスしてくれたら、離すよ」
「で、でも…////」
「今なら誰もいないよ?しよ?」
「う、うん…」
飛鳥の顔が近づき、口唇が重なった。

「ンンン……」
「ん…美味しい!ごちそうさま!」
「……////じゃあね、今度こそ行ってきます…」
「うん!行ってらっしゃい!」
今度は、椎那の頬にチュッ!とキスをして手を離した飛鳥だった。

そして椎那は、顔を真っ赤にして中に入っていったのだった。
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