獅子組と私
「あのね…」
「ん?」
「終わってから、紹介したい女の子がいるの。
私の友達」
「椎那の友達?」
「うん、同僚の子」
「…………うん、わかった」
「じゃ、じゃあ…コーヒー持ってくるね」
そう言って、厨房に戻る椎那。

その後ろ姿を見ながら、飛鳥が言った。
「きっと、友達じゃないね」
「だろうな…!」
道彦も腕を組んで言った。

「無理矢理、“紹介してよ?”とか言われたんだろうね。きっと……」
「椎那ちゃんって、押しに弱そうだし…」
滉二と一朗も、苦笑いをして言った。


コーヒーを飲んだ後、大学に向かった飛鳥達。
講義が終わり、門に向かうと椎那がいた。
「椎那!!」
「飛鳥くん!お疲れ様」
「あれ?まだ仕事中じゃないの?」
「今日は早くあがれたの。だから、お迎えに…なんて(笑)」
「そっかぁ!
フフ…可愛い~!」
そう言って、抱き締める飛鳥。

「ねぇ!伊瀬さん!」
「あ!飛鳥くん、ごめん、ちょっと離して!」
ゆっくり飛鳥の腕から抜けた椎那。

「えー、もっとギュッてしたーい!」
「うん、ごめんね。
あの、今朝話した友達。町北 桐絵さんだよ」

「ふーん。どんな友達なの?」
「え?ど、どんな?だから、職場の同僚だよ」
「あー、聞き方がおかしいよね。
どの“程度”の友達なの?」
「え?どの?えーと……」
「椎那じゃない。君に聞いてるの」
そう言って、桐絵を見た飛鳥。

「え?な、仲良いですよ?とっても」

「ふーん。じゃあ…椎那の為にしてあげて欲しいことがあるんだけど?お願いできる?」
「え///?は、はい!」
飛鳥の微笑みに、顔を赤くして答えた桐絵。

「ほぼ毎日来てる男いるよね?常連の」
「え?あ、村部さんって方ですか?」
「そう。椎那のこと“エビちゃん”って言ってた」
「はい」

「彼に釘指してよ!
“二度と、椎那に関わらないで”って!
君、椎那の“とっても仲の良い友達”なんだよね?
だったら、椎那の為にできるよね?」
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