獅子組と私
そのままグッと引っ張られ、人気のない所に連れていかれた。

「俺達さぁ、獅子組には痛い目に合わされてばっかなんだ~!君が責任とってよ!」
壁に追い詰められた。

「てか!なんか獅子組ばっか、いい女が寄ってくんの?」
「だよなぁ!」
「さっきはたいしたことないと思ってたけど、こうして見ると結構可愛いじゃん!」

口唇をなぞられた。
瞬間的に、身体中鳥肌が立つ。

飛鳥に触れられるとあんなに身体が熱くなりドキドキするのに、今は嫌悪感と恐怖、悪寒がする。

「つーか、見ろよ!
腕とか、ほっそ!ほんとにヤんの?」
「ヤっても、物足りねぇんじゃね?」
「でも、結構可愛いし!いいじゃん!」
「まぁな!」

「え……!?」
(何の…話…?)

「とりあえず、カラオケの個室行こうね~!」

「え………は、離してください!」
「無理!!俺達と楽しもうよ~!」

(う、嘘…!や、やだ!!怖い!!)
「お願い!離して!!」
椎那の力では、全くびくともしない。
それに掴まれた手が痛くて、骨が折れそうだ。

【椎那の腕、折ろうと思えば折れるよ!】

何故か、飛鳥の言葉が蘇ってきた。
このまま、腕を折られるのではないか。
そう思うと、更に恐怖が増し身体が震えてくる。

「助けて!!
飛鳥くん!!助けて!!」

すると、ザッ━━━━!!!と風を切る音がして掴まれていた手が解放された、椎那。

気づくと、飛鳥に抱き締められていた━━━━━

「椎那!!」
「あ…飛鳥く……」
飛鳥の香水と煙草の匂い、温かいぬくもり、柔らかな声……
途端に、涙が溢れてくる椎那。

「もう大丈夫だよ!」

大丈夫━━━━━
その一言で、椎那は更に安心感でいっぱいになる。
「うん…!」


「僕の大切な恋人に何の用?」

飛鳥の鋭い目が、男達を捉えた。
< 22 / 90 >

この作品をシェア

pagetop