獅子組と私
「椎那、ちょっと待っててね!
後からいっぱい、キスしようね~!!」
そう言って、額にキスをした飛鳥。

椎那を庇うように、飛鳥達四人が立ちはだかった。

「お前等、バカ!?」
道彦の言葉。

「あ?」

「バカなんじゃない?キングの女に手を出すんだもん!」
滉二も呆れて言った。
「だったら、教えてあげなきゃ!」
一朗が手をコキッ!コキッ!と鳴らした。

「さぁ……スイッチ入れよっと!!」
そう言った飛鳥。
一瞬で、雰囲気が黒く染まった。

ズンッ…と、ゲームセンター内が重く圧迫された。

あとは、たった数十秒の出来事だ。
飛鳥一人で相手の男達三人を一掃した。
相手に反撃の隙も与えない素早い行為。

あっという間に、男達は倒された。

「はい。終わり!
君達、弱いね!」
飛鳥がしゃがみ、男の顔を覗き込んだ。

「飛鳥、最短記録じゃね?」
「そうだよ、俺達の出番ないし!」
「だな!飛鳥、一人くらいとっておいてよ!」

「だってぇ、弱いんだもん!」
そう言って、椎那の元に向かった。
「飛鳥くん…」
「お待たせ!もう、帰ろ?」
「………」
椎那はゆっくり、飛鳥の両手を掴み手の甲をさすった。
「椎那?」
「ごめんね……ごめんなさい!」
「どうしたの?どうして、謝るの?」

「………私がもっと強かったら、大切で大好きな飛鳥くんの手を傷つけずに済んだから」

「今……なんて…?」

「え……?」
見上げて、飛鳥を見る椎那。
「今の…もう一回言って?」
「え……私がもっと強かったら…」
「うん」
飛鳥が椎那の頬を両手で包み込む。

「大切で……」
「うん」
そして親指で、口唇をなぞる。
これだ!この感じだ。
なんだか心地よくて、ドキドキして身体が熱くなる。

「大好きな、飛鳥く━━━━ンンン……」
言い終わる前に、口唇を塞がれた。

「……ん…僕も、大好き……大好きだよ…!」
熱っぽい瞳で、見つめ言った飛鳥だった。
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