獅子組と私
「え……あ、あの…」
「ねぇねぇ!椎那は、彼氏いるの?」
「い、いませんけど……」
「へぇー、じゃあ…僕の恋人になってよ!」

「………」
「椎那?」
「なんか、私…騙されてます?
私を騙しても、何のメリットもないですよ?
お金なんて、持ってないし!」

突然の飛鳥の告白に、固まりフリーズする椎那。

「なんでそうなんの?」

「だ、だって!
あり得ないですから!
獅子倉様と私が恋人同士なんて……」
「なんで?」
飛鳥は目をパチパチして、椎那を見つめている。

「私はただのレストラン従業員だし」
「うん。なんか、問題ある?」
「それに、確か…20歳になったばかりですよね?」
「うん」
「私と10歳も差があるし」
「全く気にならない」

「あ!わかった!遊びだ!
まだ大学生の遊びに付き合ってってことですね?
そうゆうのは、別の可愛い同じくらいの歳の子にしてください!」
椎那は、頭を下げ踵を返した。

しかしすぐにガシッと手を掴まれた。
そして握りしめられた。
「い、い…たい……ちょっ…離してくだ……」

「何、それ?」
「え……獅子倉…さ、ま…?」

「僕はね……そんな、いい加減な人間じゃないだよ?
いい加減なのは、女の方なんだから!
獅子組のキングの彼女になりたーい!とか、玉の輿!とか言って、この僕をステータスみたいに扱ってさ!
椎那は、初めて自分から欲しいと思った女性なのに、そんな言い方酷いよ!」

椎那の手首を握りしめ、苦しそうに顔を歪める飛鳥。
握りしめられたこの痛みは、飛鳥の心の痛みを表しているかのようだ。
椎那は、心に突き刺さったように締め付けられた。

「ご、ごめんなさい!!
私、一度騙されたことがあって……それで“またか”って思っちゃって……!
本当に、ごめんなさい!!」
椎那は必死に頭を下げた。
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