獅子組と私
そして一方の椎那━━━━━━

「椎那、ごめんね!遅くなっ……ちゃっ…た。
どうしたの!?」
清美と琴子が、一朗のバーのVIPルームに着くと椎那は両手の指を祈るように組み、目を強く瞑っていた。

「清美ちゃん、琴子ちゃん。
飛鳥くん達が、無事に帰ってくるように祈ってるの」

「大丈夫よ、椎那。
獅子組の幹部が、そんな簡単にやられたりしないわ」
琴子が椎那の横に座り言った。

「そうよ、キングを信じな!」
清美も反対側に座った。
「うん……」

「このピアス……」
琴子が不意に、椎那の右耳のピアスに触れた。
「ん?琴子ちゃん?」
「元々は、哲士のピアスだったのよ」
「え……」
「哲士が死んだ時に、キングが形見にってつけるようになったの」
「嘘……知らなかった…ごめんね!大切な恋人さんの形見を私がつけてるなんて……
すぐ外すからね!これは、琴子ちゃんが持ってなきゃ!」
慌てて、ピアスを取ろうとする椎那。

「ダメよ!」
「え?でも……」
「私は哲士から、たくさんの思い出を貰ったからいいの!それに、そのピアスは獅子組のキングの意味もあるからキングと椎那がつけてないと……」
琴子は椎那の手を阻止しながら、語りかけるように言った。


「清美ちゃんは、道彦くんとお付き合いしてどのくらいなの?」
「ん?えーと……高二の時からだから…四年目?かな」
「辛いことない?心配のしすぎで……」
「うーん、慣れたかな?」
「慣れ?」
「最初は、辛かったよ?
いっつも道彦、怪我とかしてたし。
道彦の彼女ってだけで、連れ去られることもあったなぁ……!」
「そうだよね…」
「でも、もうやめたの!」
「え?」
「心配する事、辛いと思う事を。
道彦の彼女ってのを、利用ってゆうか…堂々としようって!道彦の彼女として辛いことがある代わりに、とことん道彦に守ってもらおうって!」
「清美ちゃん…」
「そして何より!」
「ん?」

「私の大好きな恋人を……道彦を、信じようって!」
この時の清美の瞳は、とても綺麗に輝いていた。
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