獅子組と私
女子大生の間を縫うようにかき分け、飛鳥に抱きついた。

「え━━━━━椎那?」
「飛鳥くん、帰ろ?」
「うん」
飛鳥の手を引き、再度女子大生の間を縫うように出た。
道彦達も後に続いた。

飛鳥「椎那?どうしたの?」
(だめ…今、しゃべったら涙が出てくる)

道彦「どうしたんだよ?」
(そうだ!なんか、楽しいことを考えよう!)

滉二「椎那ちゃん?」
(あ!そうだ!この前見つけた、お揃いのパーカー。
飛鳥くんが嫌がらないかな?)

一朗「おーい!椎那ちゃーん!」
(お揃い……)

「椎那!!?」
グッとそのまま飛鳥に手を引き寄せられた椎那。
「………」
「どうして泣いてるの?」
「飛鳥くん」
「ん?」
「私、欲しい物があるの」
「何?」
「パーカー」
「うん、いいよ!買いに行こ?」

「じゃあ…俺達は、先帰っとくよ!」
道彦が気を遣い言った。
「じゃあね!飛鳥、椎那ちゃん!」
「後でね~」
滉二と一朗も、手を振りながら言ってこの場を去った。

「行こ?椎那」
手を繋ぎ直し、指を絡めた飛鳥。
椎那の手を引いた。
「あ、あの!」
「ん?行かないの?」
「ううん。そうじゃなくて、パーカーなんだけど……」
「うん」
「………ペアなの。飛鳥くんは、そうゆうの嫌かな?」
「ペア?」
「うん…あ、でも、嫌なら━━━━━」
「嬉しい~!!椎那とお揃い!!」

「いいの?」
「もちろん!早く行こ~」


「これなんだけど……」
「へぇー、いいじゃん!」
「ほんと?」
「うん!」
とても嬉しそうに、パーカーを眺める飛鳥。
椎那は心が穏やかになっていくのを感じていた。

「あ、このスニーカー」
「ん?欲しいの?」
「え?あ、いや…」
まさにこれは、卓志に断られたスニーカーと同じブランドの物だ。

「これも買おうか?椎那とお揃い、増えるの楽しいし!」
「いいの?嫌じゃないの?」
「え?全、然!椎那が欲しいって言うなら、何でも買ってあげる!」
満面の笑みの飛鳥に、椎那はまた涙が出てきていた。

「飛鳥くん、ありがとう!ごめんね……」
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