獅子組と私
深まる
「伊瀬さん?伊瀬さんだよね?」
「え?深川(ふかがわ)さん?」

「うん、そうよ!久しぶりね!」
「そうですね…!」
今日は椎那は仕事が休みの為、一人でショッピングに来ていた。
飛鳥達は学校だ。

突然、女に話しかけられた。
椎那が今のレストランに勤める前に勤めていたレストランの同僚・深川だ。

「伊瀬さんって、獅子組のクイーンなんでしょ?」
「え……は、はい…」
「へぇー」
含みのある笑いをする、深川。

「あの…」
「お願いがあるんだけど……」
「え━━━━」

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「ヤバい!可愛い~!!」
「やっぱ、キングの女って感じ!!」
ある地下のバーに連れてこられた椎那。
今はやってないようで、所々埃が溜まっている。

「え……こんなに沢山の人達…深川さん!話が違っ━━━━」
「とにかく、一緒に食事の相手をしてくれたらいいから!」
深川から聞いていた話と違う為、深川の服を掴み耳打ちする椎那。
それを微笑み、言い聞かせる深川。

【あのね、私の彼が獅子組に憧れてて……
会わせてほしいなって!
それで、その前に伊瀬さんを紹介したいなって思って!一緒に来てくれない?】

深川の恋人に会うだけだと思っていた。
なので了承したのだが………
実際来てみると、男性ばかりザッと数えても十数人はいる。
「深川さん、帰らせてください!」

「ねぇ~椎那ちゃんだっけ?
遊ぼうよ~!!」
「相手して~!!」
椎那に、のしっと体重を乗せるように抱きついてくる、男。

「あ、あの!ちょっと、お、お手洗い!
行かせてください!!」

「えーー!早く帰ってきてよ?」
男の一人が、ニコッと笑っていった。

トイレの個室で、スマホを取り出そうとする椎那。
飛鳥に連絡しようとしたのだ。
「あ、あれ?ポケットにスマホ、入れてたのに……
なんで、ないのー!?」

「あ、椎那ちゃーん!
スマホ、預かってるから!」
「え…!?」
「早く出ておいでよ!」
男の声が、トイレの外から響いてきた。

飛鳥くん━━━━━━!!!
椎那は目をギュっと強く瞑った。

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