獅子組と私
「いくらなんでも、無理だろ(笑)飛鳥」
道彦が笑いながら言った。

「飛鳥って時々バカみたいなこと、言うよね……(笑)」
「飛鳥ーやめとけよ!お前の手が傷つくんじゃね?」
滉二と一朗も、少々呆れ顔だ。

「フフ…でも~!ヒビくらい入れられそうかなぁって!」
「うがぁぁぁぁーーーーー!!!」
飛鳥が手に更に力を入れた。

「んーー!!やっぱ、無理みたーい!」
漸く飛鳥が、手を離した。
すると、バサッとその男が崩れ落ちた。

「てめぇ!!」
その場にいる男達が、鉄パイプなどを持ち飛鳥に向き直った。
中には、ナイフを持っている者がいる。

「な、ナイフ……!?」
椎那は手を口元に当て、震えだした。
こんな場面、椎那はドラマでしか見たことがない。

飛鳥を助けなければ!
そう思うのに、身体が動かないのだ。

そんな状況でも、飛鳥は微笑んでいる。
「いいよ~!纏めてかかっておいで?」

男達が纏めてかかってくる。
ほんとに5分程度で、全員が飛鳥一人に倒された。
こんな表現、適切ではないが……
とても綺麗だった。
無駄のない動きで、なぎ倒していったのだ。

「弱いよぉ~!!」
飛鳥がふて腐れたように言った。

そして椎那に向き直り、ニコッと微笑んで言った。
「椎那、帰ろ!」

「飛鳥…くん…」
「おいで?椎那」
両手を広げ言う、飛鳥。
「腰が…」
「ん?」
「腰が、抜けちゃった……」

「え?
…………フフ…可愛い~」
そう言うと、椎那の前に跪き抱き締めた。
「飛鳥くん…」
「ん?」
「助けてくれてありがとう!」
「うん!」
椎那も飛鳥の背中に腕を回し、しがみついた。

そこに倒れた男達の一人が、痛みに顔を歪めながらゆっくり起き上がった。
そしてナイフを掴み、ゆっくり飛鳥に向かってくる。

「え━━━━━!!?
飛鳥くん!!危ない!!?」

パシッ━━━━━━━━!!!!
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