獅子組と私
椎那「んん……トイレ…」
夜が更けて椎那は一人、目を覚ます。
飛鳥に宝物のように抱き締められている。
ゆっくり這い出て、部屋を出た。

椎那「綺麗~」
トイレの帰りに、外に出た椎那。

滉二「椎那ちゃん!」
椎那「へ?滉二くん!?」
滉二「どうしたの?寝れない?」
椎那「ううん、お手洗いに起きたら外に目がいって。
星、綺麗だね~!」
滉二「だね!」
凛音「素敵~グランピングも、ほんと楽しかったね!
こんなに楽しい旅行、初めて!!ありがとう!」
真っ直ぐ見上げ、微笑む凛音。

滉二「椎那ちゃん、君って……ほんと…」
椎那「え?」
滉二「椎那ちゃんって、残酷な女だね……」
椎那「え……」
滉二「日に日に俺の心奪っておいて“飛鳥”しか欲しない。これ以上、俺の心奪わないでよ!」

椎那「え……?」
あっという間に壁に押しつけられた。

滉二「今だけでいいから、俺を……俺のことだけを見て?」

滉二の優しい目が、悲しく光る。
こんなに弱々しい、滉二の声を知らない。

獅子組の幹部とは思えない、いつもニコニコして穏やかな滉二。
でもいざというときは、すぐに駆けつけ守ってくれる頼もしい滉二。

そんな滉二のすがるような言葉と声に、椎那は胸が締めつけられていた。

滉二「好きなんだ、椎那ちゃんが……」
コツンと、額を合わせてきた。
椎那「滉二…く…」
滉二「別に飛鳥から君を奪おうとは思ってないよ?
飛鳥の事も好きだし、大切な仲間だから!
でも、椎那ちゃんのことは別なんだ!
今だけでいいから、俺という男をちゃんと見てほしい!」

椎那「ごめんなさい……」
滉二「椎那ちゃん?」

椎那「ごめんなさい…滉二くん。
私は飛鳥くんが好きなの。どうしようもなく。
命がけで、飛鳥くんに恋をしてるの…!
私が!飛鳥くんじゃなきゃダメなの
飛鳥くんじゃなきゃ、何も感じない。
抱き締められたいのも、キスしたいのも、抱かれたいのも飛鳥くんじゃなきゃダメ……
だから、滉二くんの気持ちに答えられない!
ごめんなさい…ごめんなさい……」

滉二「フフ…なーんてね(笑)!!
だよね~!可愛いなぁ、椎那ちゃん!」
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