死ぬ前にしたい1のコト
・・・
「……追い出すどころか、昼飯集られた? 」
翌日のお昼。
お弁当箱を持って、いそいそ外に出ようとすると、ユウに首根っこを掴まれてしまった。
「まあ、想定内だけど。ってことで、一緒に行くから」
びくびくしてる私に飽きれ声で言って、「そんなの、お見通しだって」と急に離されてふらついた体を、笑って支えてくれた。
「え、でも……」
「いーんだって。イチは分かんないだろうけど、あいつも、それ見越してんの」
「……なんで? 」
ユウが着いてくるの見越して、誘って――いや、ランチを集るなんて。
そのわりに、「何か食べたいものある? 」には、『一華さんの手作り、怖いもの見たさで試してあげる』とか、遠慮したのか失礼な返事をしてたけど。
「それで、会社近くの公園だったんじゃないの? うちの奴も結構いるし、仕事遅れても駆けつけられるし」
「……ユウに会いたかったってこと? なんで? 」
そういえば、昨日一緒に帰ってくると思ってたって言ってたっけ。
でも、今日はユウが一緒にランチしてくれるとは限らないのに。なん――……。
「さーね? なんでなんで言ってないで、少しは自分で考えなさい」
「えー。あ、そうだ、ごめん!! 」
実くんに会う前に、これを謝らなきゃ。
「初めて会った時、なぜかユウのこと聞かれて……言っちゃった。ユウが女の子に興味がないってこと」
「……ああ、それで」
「勝手にごめん。え、それって? 」
伝えるまで動けないと固まった私の手を引いて、ユウが公園へと急かす。
「だから、それでな、ってこと」
「……なに」
「自分で考えろって言ったでしょ。ほら、行くよ。貴重な昼休み、変なことで潰れんだから」
(面目ない。でも……なん、)
続きを心の中ですら飲み込んだのは、注意されたからじゃない。
『……ああ、それで』
そう低く吐き捨てた時のユウは、ちょっと怖かった。
スッと下に落ちた視線も、その先の何を見ているのか分からない瞳も。
何だか知らない人みたいで、私の目も違う方向に彷徨うしかなかった。