死ぬ前にしたい1のコト

「本当に覚えてないんだ。誘うなら名前くらい教えてよって言ったら、素直に名乗ってくれたのに」

「さそっ、さそっ………!? 」


……ちゃったんですか。
やっぱり、そうなんだ。
私、本当に最低。


「俺がここにいる理由、それしかないでしょ。……まあ、当の一華さんは、俺の名前なんか聞かないで、ベッドにごろん、しちゃったんだけどね」

「ごっ……」


最悪すぎて泣きそう。
いや、本当に涙が出てきた。
でも、それは羞恥心と言うより、情けなさと申し訳なさの方が強い。


「……ごめんなさい」

「え? 」


楽しそうだったからかい口調が、訝しむように低くなる。
そんな声はやっぱり男の人だけど、彼にとって私が女なのかどうか――ううん、違うよなって。
そう思うと、余計に罪悪感が押し寄せてくる。


「何で、あなたが着いてきたのか謎だけど。それでも何か……ごめんとしか言いようがない。犯罪感すごくて」

「あー、それはないんじゃないの。そっちから誘っときながら、今更子供扱い? ……ムカつく」


両手首を握られ、やや強引に体が回転する。
さっきの瞼が下りた状態よりは少し大人で、とてもその目を見ることなんかできない。


「俺は別に、今からやったっていいんだよ。一華さんが言うだけ言って潰れちゃったから、しなかっただけ。さすがにそんな困ってねーよ」

「……本当に、何で着いて来たの? 」


目の前の男の子は、私と違ってそんな“困る”要素がまるでない。
寧ろ女の方が放っておかないだろう、可愛くも格好よくもなれるイケメンだ。


「初めてだったから。……ね、犯罪感だか何だか知らないけど、変な罪悪感抱いちゃってるならさ。年下の男から初めて奪った責任の方が重いって思わないの」

「……初めてって……どういう嘘? 」


そんな嘘、通用するわけない。
モテそうな雰囲気しか漂っておらず、そうやってかなり年上の女をからかう余裕があるなんて、そんな童貞いるもんか。


「嘘じゃない。本当に初めててだよ? ……酔ってるとはいえ、面と向かって“私とセックスしてください”なんて言われたの」


――だから、責任取ってよ。オネーサン?




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