死ぬ前にしたい1のコト
After Kiss Syndrome
「好きに言えばいいじゃないですか。私もう、その口が何て言おうと怖くないので。でも、いつまでも黙ってると思わないでくださいね、主任……じゃなかったんでしたっけ」
翌朝、ビルの前で出くわして、何を聞いたのか、実くんのことを持ち出された私はきっちりそう言い返した。
ほら、大丈夫。
実くんは、家を出るその時まで一緒に行くって言ってたけど。
私もう、こんなことで悩んだりしないよ。
今でも、あの時の私は大失敗をしたって思うけど。
それでも、この人の目や口なんかどうだっていい。
珍しく足取り軽くエントランスへと向かった私は、ちっとも気がつかなかった。
「格好いい子でよかったね? あんなに最低な目に遭わせたのに、忘れてくれるんだってさ。……じゃなかったら、俺も耐えてねぇよ」
いつもと違う声が、知らない口調でそう言ってくれたのを。